技能実習生が失踪した場合の手続きや届出はどうすればいい?

技能実習生や特定技能在留資格を取得した外国人労働者がある日突然いなくなるという失踪問題は未だに根強く残っています。

厚生労働省が外国人技能実習生の待遇改善を呼びかけたり、不当な扱いを受けた場合の相談窓口などを開設していますが、失踪の理由は不当な扱いだけではありません。

今回は、外国人技能実習生が失踪した場合の手続きや届け出を行うにはどうしたらいいのかを考えていきます。

無くならない失踪問題

外国人技能実習生は年々増加しております。

失踪人数の割合としては、全体の3%程度にとどまっていますが、平成26年には失踪人数は約5000人だったのに対して、平成30年には約9000人と年々増加しています。

これは、技能実習生の数自体も増加しているため、同じ割合で人数が増えているということになり、失踪者の割合は横ばいの状態が続いています。

しかし、年間約9000人の失踪者が出ている外国人技能実習制度は他の労働制度と比較すると特殊なものと言えるでしょう。

なぜ失踪してしまうのか?

外国人技能実習生の失踪問題は長年、その不当な扱いが原因であるとされてきました。そのため、政府も外国人技能実習生の待遇改善や労働基準法の準拠といった法令遵守を受け入れ企業に呼び掛けてきました。

しかし、様々な問題が複雑に絡み合って、外国人技能実習生が失踪してしまうということもあり得ます。

たとえ技能実習生の受け入れ企業がきちんとした給与を支払っていても、監理団体が違法な団体だった場合、給料の中抜きなどを行ったり、通常の技能実習制度では違法とされているようなマージンを実習生本人に要求したりしている可能性もあり、受け入れ企業だけの問題でもありません。

こうした違法な監理団体からの派遣を受け入れ企業側で防止することも必要ですが、どんな監理団体が違法な団体なのか、なかなか難しい問題です。

また、十分な給与が与えられたとしても、国内で外国人技能実習生を物色する違法なブローカーが、もっといい仕事があると誘ってきて、技能実習生本人がその誘いに乗ってしまうということもあります。

こうした状況は受け入れ企業だけでは防ぐことができないため、失踪者が出てしまった場合には、隠すことなくきちんとした手続きを行うことで、労働基準法を準拠しているのに失踪したということを証明することにもつながります。

外国人技能実習生が失踪してしまったら、届け出を行いましょう。

外国人技能実習生が失踪した場合の手続き

まず、外国人技能実習生がある日職場に来なくなり、寮に行っても実習生本人を確認できず、連絡が取れなくなってしまった場合、失踪したということになりその場合、JITCOと入国管理局へ外国人技能実習生の行方不明報告書を提出する必要があります。

その様式には監理団体と受け入れ企業の連絡先と名称、失踪した技能実習生の個人登録情報を記載します。

さらに、行方不明に至る近況と経緯、今後の対応策を記載する欄があり、違法な労働環境になっていた場合、立ち入り検査などの措置が取られる場合などがあります。

いずれにしても、失踪者が出てしまったということに受け入れ企業側に不備や落ち度がなければ、実習生本人の問題となります。

こうした部分から失踪者が出てしまっても最低賃金違反やパワハラといった不当な扱いがなければ何も恐れることはありません。

しかし、不当行為が失踪をきっかけに分かった場合、受け入れ企業の技能実習生の受け入れ禁止などの措置が取られる可能性もあります。

就業規則にも明記する

受け入れ企業がどれだけ法的に問題がない体制で外国人技能実習生を受け入れたとしても、ブローカーなどの甘い誘いに負けて失踪してしまうということも十分に考えられます。

その際に、就業規則にも「2週間以上の欠勤をした場合には退職したものとみなす」という一文も明記する必要があります。

2週間という基準は民法の退職の申し出を行い退職可能な期間となります。

企業側も2週間欠勤が続けば失踪したということを認識し、失踪に関する手続きを行う必要があります。

勿論、その間には警察への捜索願や監理団体への連絡などを行う必要があります。

外国人技能実習生も人間ですので、より給料のよい仕事があると聞くと気持ちが揺れ動いてしまうこともありますが、技能実習生は受け入れ企業を変えるということが原則としてできません。

こうした制度の規定をよくわからずにブローカーの話を鵜呑みにして失踪してしまうということもあります。

これは、受け入れ企業では防ぎようがありません。

本人にも失踪すると本人にも悪い影響が及ぶと説明

厚生労働省の報告書では、失踪理由を調査した場合の2割を占めていたものに「実習終了後も日本に残りたい」というものがありました。

これは、3年または5年の技能実習期間が満了すると強制的に母国へ帰らされるのではないかという不安からの失踪が2割を占めているということです。

こうした失踪は受け入れ企業でも技能実習生本人にも悲劇でしかありません。

しかし、受け入れ企業や監理団体が技能実習後は母国へ帰らねばならないということでしか話さなければ実習生も日本に残る方法をどこにも相談することができません。

現在は特定技能の在留資格も創出され、様々な対応ができるような状況になっています。

技能実習生にも犯罪歴などがなく、勤務態度も真面目であれば日本に残る方法は多くあるということも実習生本人に伝える必要があるでしょう。

失踪は違法行為となりますので、実習生本人にとっても不利な状況を招くということを伝えてあげましょう。

そのためには日ごろのコミュニケーションがとても重要となります。

外国人に日本人の常識が通用しないと言うけれど

よく失踪目的の外国人技能実習生がいて、受け入れ企業に配属された以後すぐに失踪してしまうというケースもあるとマスコミでも外国人技能実習生が悪いように報道された例もありました。

しかし、こうした技能実習生は全体から見ると僅かな割合です。実習生の多くは日本に来て真面目に働くことを考えている人ばかりです。

日本では、悪事を働く人間が一部いると全体的にそういう目で見てしまうという特徴があります。

また、こうした制度を利用して入国して失踪することで、外国人には日本人の常識が通用しないということも言われていますが、日本人であっても悪事を働いたり、制度を悪用するという人がいます。

結局は外国人だろうが日本人だろうが、こうした制度を悪用したりする人は少数でも存在するということです。

受け入れ企業としても、こうした少数の外国人技能実習生に当たってしまった場合の対策を取っておく必要があります。

いざとなった時に慌てないために、失踪してしまった場合の受け入れ企業側の法的に問題がない職場環境だったということの証明ができるようにしておきましょう。

外国人技能実習生の失踪調査結果でも、失踪の原因が受け入れ企業による不当な扱いやハラスメントなどによるものです。

こうした失踪は外国人技能実習生もやむを得ずに失踪したということで同情できます。

しかし、そうした不当な職場でなかった場合でも失踪してしまう実習生もいることを意識しておき、いざ失踪者が出た時に慌てないように体制を整えておきましょう。

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